家族信託活用事例F-3:きょうだい児が受託者となり老親と障害児を支えるケース

家族信託活用事例F-3:きょうだい児が受託者となり老親と障害児を支えるケース

山田太朗さん(75)は、障害のある長男 子太朗さん(45)と二人暮らしをしています。
太朗さんは、将来自分が長男の生活をサポートできなくなった後のことを心配しています。
幸い、結婚している長女 さきさん(48)が孫も含めて近所に住んでいるので、何かあったときは、太朗さん・子太朗さんのサポートは、長女家族がしてくれることは家族内で了解が取れています。

太朗さんは、自宅とその隣にアパートを1棟持っていますが、将来に備え、今から何をしたらよいか悩んでいます。

解決策

家族信託活用事例F-3:きょうだい児が受託者となり老親と障害児を支えるケース

太朗さんは、障害のある長男の将来の支援体制を整えるために、今から「法定後見人選任申立て」をして、信頼できる司法書士と自分の2名が成年後見人に就任します。

太朗さんは、後見人として引き続き身上保護(入院・入所契約の締結、介護プランの検討など)の部分を担います。
一方、職業後見人は、財産管理と家庭裁判所への事務報告をメインに行います。

次に、太朗さんは、認知症・大病による資産凍結対策として、長女を受託者、自宅とアパートと非常用資金を信託財産として信託契約を締結し、自分の老後の財産管理を託します。
自分が亡くなった後は、そのまま信託財産(受益権)として長男と長女に半分ずつ承継させます。

ポイント解説

太朗さんが元気なうちから“複数後見”を利用することで、身上保護は自らが行いながらも後見事務の負担を減らし、かつ職業後見人に対して子太朗さんの生い立ちや趣向、身上保護方針など様々な情報・希望を直接伝えることで、安心して親なきあとを託すことができます(自分亡き後に自分の知らない専門職が長男の後見人になるという漠然とした不安を解消できます)。
一方で、自宅・アパート・非常用資金の管理は、家族信託で長女が柔軟かつ軽負担で管理でき安心です。

また、太朗さんが亡くなった後も信託契約は継続する設計にし、自宅とアパートと大部分の金融資産は信託財産として姉弟で財産を半分ずつ承継する形(第二受益者として長女・長男を指定)にすることで、長女にあまり負担をかけない中でも万全かつ柔軟な財産管理を実現するとともに、アパートの収益も姉弟でシェアできるため、公平感のある資産承継も実現できます。

長女は、太朗さんが亡くなった後でも、子太朗さんに関する手術同意など親族でないと判断できない部分を除き、職業後見人に身上保護の権限を持ってもらうことで、“きょうだい児”としての精神的な負担を減らし、自分の生活を最優先にできることを目指します。

さらには、30年後まで見据えた家族信託の設計として、将来的には、孫之介さんが後継受託者として、高齢となったさきさんや子太朗さんの老後の財産管理を担うところまで道筋をつけることが可能です。

家族信託の活用事例

A.生前の財産管理

B.不動産の共有トラブルを回避

C.資産承継における“想い”を実現

D.争族トラブル防止

E.事業承継

F.福祉型信託