家族信託組成の動機・目的(得られる効果)

どのような目的で家族信託を組成・導入するのか。

目的や導入により得られる効果・メリットについて簡単にご紹介します。

(1) 成年後見の代用・相続対策の頓挫回避

後見制度の利用、特に親族後見(子供や孫、甥姪等の家族・親族が後見人になるケース)では、家裁への定期的な報告をしなければならないという親族後見人の負担は非常に大きなものがあります(精神的・経済的負担)。さらに近年の傾向として、本人(以下、本稿では「本人」を「老親」に想定)の保有資産が多いとすぐに「後見監督人」が就けられるケースが増えています。これにより、後見監督人となった司法書士や弁護士に対しては、通常の年1回よりも報告の期間が短く、3ヶ月から4ヶ月に一度くらいのペースで収支状況等を報告しなければならなくなっており、さらに親族後見人の負担は増していると言えます。
また、後見監督人が就いた結果として、本人の資産から後見監督人報酬(月額1~2万円程度)を負担せざるを得ないので、監督された上に費用もかかるということになります(経済的負担)。
さらに、成年後見制度の趣旨から、後見人にできることとできないことがあります。例えば、預貯金が充分にある場合には、空き家となった自宅を売却できるかは微妙ですし、本人が住まなくなった自宅や老朽化したアパートを本人の預金でもって建替えることは通常できません。つまり、本院が元気であれば継続的に実行していただろう≪相続対策≫≪相続税対策≫の実行は、成年後見制度の利用により頓挫する可能性が高くなります。

以上のように、≪負担≫と≪制約≫が多い「成年後見制度」を使わない 老親の財産管理の手法として、本人及び家族の希望に即した柔軟な財産管理・資産の組換え等が実現できる『家族信託』が注目を集めているのです。家族信託では、成年後見制度の利用下では実行できない≪相続対策(相続税対策)≫の実行も、本人の健康状態に左右されずに相続発生のギリギリまで継続できることになります。

(2) 判断能力の低下・喪失による資産凍結回避

本人の元気なうちから財産管理を託せるとともに(委任の機能)、将来的に本人の判断能力が低下・喪失しても、本人に対して本人確認手続き等を行う必要が無いので(管理処分権限を持つ受託者に対して本人確認手続きが行われるので)、実質的に本人の保有資産である不動産や預貯金等が“凍結”されることなく財産の管理や処分が引き続き実行できます。

(3) 遺言代用、争族・資産承継対策

≪遺言の機能≫として本人死亡後の財産の承継者を指定できるだけでなく、2次相続以降の財産の承継先まで自分で指定できます。
この機能により、自分の希望する順番で事業承継の指定が可能となります。
また、1次相続による資産承継者(高齢の配偶者など)が認知症や障害により、遺言等で次の承継者を指定できない場合に、その人に代わって資産承継者を指定できるので、2次相続以降の相続争いの余地も排除することができます。

(4)不動産の共有回避策、共有不動産の塩漬け予防策

不動産を将来的に兄弟・親戚等で共有せざるを得ない場合、あるいは、既に兄弟・親戚等で不動産を共有している場合、何らかの事情により共有者全員の同意(実質的には全員の実印の押印など)が得られないと、不動産の活用や処分ができず、実質的に資産の塩漬けとなってしまう危険性があります。ベストなタイミングで不動産が有効活用・処分できるように、家族信託を活用して管理処分権限を受託者に集約することで、このような不安やリスクを解消することができます。

一方、家族信託を組むことのデメリットは、ほとんどありません。
しいて言えば、留意すべき点がいくつかあるということでしょうか。