信託活用事例B-1:将来的に不動産を共同相続させたいケース

X(75)は、東京 23 区内に大型のアパート1棟(収益物件)を所有しています。
将来の相続時には、土地を分筆して3等分することなく、子供3人(ABC)に均等に相続をさせたいと考えていますが、子供のうち誰か一人に当該不動産を単独で相続させるには、それに見合うだけの他の資産がありません。
また、Xは、しばらくの間はアパートの売却処分や不動産の分割(土地の分筆や建物の区分所有権化)をすることについても望んでいません。
なお、そのアパートの管理は、長男Aの家族に任せるつもりです。
また、あと10年もすれば、老朽化に伴う建替え等の問題が出てきますので、将来の当該不動産の管理・処分の方針につきABCの家族間で揉めないか心配でもあります。

信託活用事例11:将来的に不動産を共同相続させたいケース

解決策

Xは、現時点で長男Aとの間の契約において、当該アパート(土地・建物)を信託財産とする信託を設定します。その内容は、受託者をA、受益者をXとし、Xの死後、第二次受益者をABCの3人(受益権は各3分の1)にします。
Xは、信託契約において、将来的には受託者Aの独自の判断で当該アパートを建替え又は換価処分できるように規定しておきます。

ポイント

Xが考える相続のポイントは、次のとおりです。

  1.  兄弟3人に平等に相続させたい。
  2.  しばらくの間は、アパートの所有を継続してほしい。
  3.  子供のうち誰か一人に単独相続させるには、それに見合うだけの他の代償資産がない。
  4.  アパートの管理は、長男A家族に任せるが、二男Bと三男Cの家族にも、賃料収入の利益をきちんと配当してあげたい。
  5.  将来的にアパートが老朽化したら、兄弟間で揉めることなく建替え又は売却してその代金を3等分するなりしてほしい。

このようなXの“親心”をきちんと反映させるには、上記のような家族信託・民事信託の仕組みが活用できます。
信託契約の発効により、Xの生前は、認知症対策として、あるいは準備期間として、長男Aに財産管理を任せ、その働き具合を見て長男Aに受託者として財産管理の将来を託せるかを見極めます。
なお、Xの存命中は、受益者がX自身ですので、不動産の名義は「受託者 A」になりますが、贈与税や不動産取得税等の課税は発生しません。
Xが亡くなった後は、所有権を3人の共有にさせるのではなく、第2受益者として子供3人に受益権を準共有させることで、資産承継においては所有権の共有と同様の効果(平等相続)を実現できます。
子供ABCのうち、二男Bと三男Cは、賃料収入の配当を得ることができますが、長男Aの管理方針や修繕・建替え・売却処分等の判断については口を出すことができません。
長男Aは、適切なアパート管理によって収益を得て、二男B及び三男Cに対し、利益配当をきちんと行いさえすれば、アパートの管理・処分方針をめぐる無用な揉め事に巻き込まれたり、共有者の一部から協力が得られずに不動産が塩漬けで動かせなくなることを防げます。

※この仕組みにも、受託者Aあるいは第2受益者BCがもし死亡したらどうするか、信託の終了事由をどう設定するか等の様々な深い論点がありますが、問題をシンプルにとらえて頂くために割愛させて頂いております。

信託の活用事例

A.生前の財産管理

B.不動産の共有トラブルを回避

C.資産承継における“想い”を実現

D.争族トラブル防止

E.事業承継

F.福祉型信託